ベルギー陶芸便り

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素焼きの温度

 日本での、一般的な素焼きの温度というのは800度前後ではないかと思うのですが、ここベルギーでは950度です。もっと理想的な温度は1060度で、本焼きを高温焼成する場合は、そのほうが確実なのだそうです。
 私は、日本で陶芸をしていたとき、素焼きは800度もしくはそれ以下で行っていました。そのことを、教授に聞くと、「こちらでは900度以下での素焼きは考えられない。」というのです。どうしてなのでしょう。その温度の差に、何が隠れているのでしょう。そして、1060度が確実って、何が確実なのでしょうか???
 その答えは、土の中に含まれるガスにありました。私の経験・知識不足かもしれませんが、日本で一般的に土の中のガスのことが重要視されることはあったでしょうか?土の中のガスが影響して、素焼きや本焼きが失敗したという話題をそんなに聞いたことがありません。そのガス、とは空気の気泡のことでもないのです。
 土の特性も、取れる産地によって様々違いますが、どうやら西ヨーロッパの土には、焼成に問題を与えるガスが含まれているようです。どこら辺の範囲まで、それに含まれるのかはわかりませんが、ベルギーで一般に手に入る土は、ベルギー、オランダ、ドイツ、フランスあたりで取れる土なので、この辺り一帯は、そういった特性の土なのでしょう。イタリア、スペイン辺りの土はどうなのでしょうか?
 その”ガス”が抜け始める温度が900度以上で、完全に抜けきるのが1060度以上なので、最低でも950度で素焼きを、そして、もっと確実にガスの被害を避けるには1060度で、ということのようです。
 実際に起こるガスの弊害とは、どういったことなのでしょうか?私は、ベルギーの美術学校に入って、すぐにこの問題に直面しました。轆轤で挽いた器を、950度で素焼きし、1240度で本焼き焼成したところ、素地自体に、ぼこぼことたんこぶのようなふくらみが出来ています。素焼きの段階では、何もなかったのです。釉掛けの失敗、というより、明らかに土自体が膨らんでいます。こんな症状、過去に大学で共同で電気窯を焚いたとき、誰かの温度設定ミスで1400度で焼いてしまったとき以来です。(そのときは、作品はおろか、窯にもかなりのダメージがありましたが。。) この、たんこぶの正体が”ガス”なのです。教授の解析では、素焼きの段階で素地中のガスが抜けきらなかったため、本焼きで膨張してたんこぶのような状態になったということです。また、あるときは1060度で焼いた釉薬のテストピースの表面が、グツグツ煮立った状態で出てきました。その釉薬は低下度釉だったので、実際の設定温度よりも高温で焼きあがってしまったという考察もありますが、もうひとつ、素焼きの段階で、ガスは抜けきっていたか?ということも考えなければならないのです。ピンホールが出来た際にも、釉掛けは正しく出来ていたか?ということと同時に、ガスのことも頭に置かなければなりません。
 ベルギーで勉強するようになって、何度この”ガス”を耳にしたでしょうか。何か、問題が起こったときはまずはガスを疑ってみろとばかりに話題に上ります。原材料において、ヨーロッパの陶芸と、日本の陶芸の違いは何か?と聞かれれば、まずは一番にこの、「粘土に含まれるガス」を挙げたいと思います。
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by rihaya | 2005-04-10 02:45 | 留学生活徒然'03-'07
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ベルギー在住陶芸家 津田梨早の活動・制作日記


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